
「たかが蕁麻疹」と我慢していませんか? 働く女性の多くが、原因不明の激しいかゆみに長期間悩まされている実態があります。
サノフィ株式会社は、2026年に改訂された最新の「蕁麻疹診療ガイドライン(第4版)」を軸に、慢性特発性蕁麻疹(CSU)の病態と治療の進化を伝えるメディアラウンドテーブルを開催しました。島根大学医学部の千貫祐子准教授が登壇し、可視化しにくい患者の苦痛と、分子標的薬による治療のパラダイムシフトについて解説しました。
蕁麻疹の8割は「原因不明」――CSUの正体とは

蕁麻疹と聞くと「特定の食べ物によるアレルギー」を想像しがちですが、実は蕁麻疹の約8割は、特定の刺激がなく発症する「特発性」です。その中でも、症状が6週間以上続くものが「慢性特発性蕁麻疹(CSU)」と定義されます。
千貫先生は、「特発性」という言葉について、「医療用語では一般的ですが、簡単に言えば『原因のわからない蕁麻疹』ということです。自分の免疫バランスの微妙な不具合で起きていますが、治療によって整えることが可能です」と説明しました。
CSUは20代〜50代の働く世代の女性に多く、発症のピークは40代。平均罹病期間は1〜5年に及び、中には10年以上付き合っている患者も少なくありません。
「診察室では見えない」――深刻な疾病負荷
CSUの最大の特徴は、膨疹(ぼうしん)が数時間から24時間以内に跡形もなく消えてしまうことです。そのため、病院を受診した際には「肌がきれいな状態」であることが多く、医師に辛さが伝わりにくいという「認識のギャップ」が課題となっています。
調査結果によると、患者の約9割以上がCSUを「つらい」と自覚しています。
- 睡眠障害: 夜間に激しいかゆみで眠れず、日中の仕事の集中力が低下する。
- 心理的負担: いつ症状が出るかわからない不安。顔に出ると人目が気になり、接客業などでは深刻な悩みになる。
- QOLの低下: 温泉やプールを避けたり、肌を隠すために服装が制限される。
千貫先生は、「かゆみや痛みは心も削る。患者さんは長引く症状に慣れて『こんなものか』と過小評価してしまいがちですが、決して我慢する必要はありません」と強調し、受診時には「症状が出ている時の写真を撮って持参すること」を推奨しています。
8年ぶりのガイドライン改訂、治療は「抑える」から「完治」へ

2026年のガイドライン改訂(第4版)では、治療目標がより明確に、そして野心的に設定されました。
- 第1目標: 治療により生活に支障がない状態
- 最終目標: 無治療で症状が現れない状態
これまでは抗ヒスタミン薬を増量したり、補助的な薬を漫然と続ける傾向がありましたが、新ガイドラインでは効果不十分な場合の「次の一手」として、「分子標的薬(オマリズマブやデュピルマブ)」が明確に位置づけられました。
9割が知らない「次の一手」――アクセスの壁
CSUの病態解明は進んでおり、ヒスタミンだけでなく、IL-4やIL-13といった「2型炎症」の関与も判明しています。これらをターゲットにした分子標的薬は、これまでの薬で効果がなかった患者にとっての希望の光です。
しかし、調査ではコントロール不十分な患者の93.5%が「分子標的薬」の存在を知らないという衝撃的な事実が明らかになりました。
アクセスの壁について、千貫先生は以下のように指摘します。
- 情報の欠如: 地域のクリニックで、最新の治療選択肢が十分に提示されていない。
- 在庫の問題: 分子標的薬は高額なため、小規模なクリニックでは在庫を抱えるリスクを懸念して導入しにくい。
- 保険審査の地域差: 都道府県によって、ガイドライン通りの薬の増量や併用が認められないケースがある(査定の壁)。
早期受診とセカンドオピニオンを

「たかが蕁麻疹」という誤解が、適切な治療を遅らせ、働く女性の人生の質を下げています。もし、抗ヒスタミン薬を飲んでも症状が治まらない、あるいは6週間以上繰り返している場合は、CSUを疑い、専門医(皮膚科・アレルギー科)に相談することが大切です。
今回の取材会は、CSUが「治せる病気」であることを社会に発信し、一人でも多くの女性が「かゆみのない普通の生活」を取り戻すための第一歩となることを目指しています。


