中村勘九郎&中村七之助、22年目の全国巡業は歌舞伎役者が演じるのは77年ぶりの『墨塗女』 七之助の“したたかな女”役に勘九郎「腹黒い役がぴったり」

歌舞伎俳優の中村勘九郎さんと中村七之助さんが10月30日、都内で行われた『中村勘九郎 中村七之助 春暁歌舞伎特別公演 2026』の合同取材会に出席しました。

「僕たちの方から行きましょうよ」 ファンの一通の手紙が原点

同公演は、中村屋一門が2005年から毎年開催している全国巡業。東京の歌舞伎座まで歌舞伎を見に行くことができない地方の人々のために始まった公演で、時期によって「陽春」「春暁」「新緑」「錦秋」などと銘打ち、毎年欠かさず行ってきました。2020年は新型コロナウイルスの影響でやむなく中止となりましたが、2022年には全国47都道府県すべての都道府県での開催を達成。22年目となる今回は、2026年3月7日の東京・府中の森芸術劇場から3月25日の青森・リンクステーションホール青森まで全国11か所を巡業します。

勘九郎さんは「もともと子どもの頃から、父(故・十八世中村勘三郎)と『親子会』という形で全国を回っていました。その親子会が終了となり、ある日(東京の)浅草公会堂で公演していた時に、(共演の)中村獅童さんのところに地方の学生さんから手紙が来まして」と振り返り、「歌舞伎を見に行きたいけれど、行く電車代もかかる。昼と夜の芝居を見ると終電がなくなって泊まらなきゃいけない。『行きたいんだけど、行けないんです』っていう内容で。『じゃあ、僕たちの方から行きましょうよ』という形で、最初は獅童さんもご一緒に全国を回ったのがこの巡業のきっかけでございます」と明かしました。

スーツ姿のトークコーナーで歌舞伎の魅力を伝える「普通のおじさんたちだよ(笑)」 

巡業では観客からの質問に答えるトークコーナーも。勘九郎さんは「今までいろいろ試行錯誤して、トークコーナーを最後に付けたり真ん中に持ってきたりしたのですが、昨今は最初に持ってくるようにしました」と語り、「というのも、初めて歌舞伎をご覧になるお客さまは、『歌舞伎って難しいんじゃないか』『理解できないんじゃないか』と思っている方たちが多い。トークコーナーでは僕たちもスーツ姿で登場するので、『普通のおじさんたちだよ(笑)』っていうのを伝えてあげると、その後にご覧になる演目にすんなり入っていけると思います」と工夫したといいます。

また「地元の方たちとお話が出来るっていいなと思います。この間も地方の公演にて『今幸せですか?』っていう不思議な質問をいただきました(笑)」と明かし、「質問は挙手制ですがお国柄が出るといいますか、積極的にバンバン手を挙げる土地もあれば、大人しい土地もあって、『この地域の人たちはこういう感じなんだな』と見られるのも、楽しみの1つですね」と語りました。

七之助さんも「質問コーナーで、その土地土地の方々と交流も出来るようになりました。『オススメのお店はどこですか?』とこちらから逆質問をしてみたり。そして昼の部と夜の部の間に実際にオススメされたお店に行ってみたり。とてもアットホームなトークコーナーなんです」と巡業公演ならではの魅力を語りました。

ファンとの交流を大切に&地方巡業の楽しみは「サウナ」

今回の公演では、実在した商人・紅翫(べにかん)が登場する『艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか)』、通称『紅勘(べにかん)』と呼ばれている演目と、昭和23年に大阪で上演されて以来、歌舞伎役者が演じるのは77年ぶりとなる『墨塗女(すみぬりおんな)』を披露。『紅翫』は、富士山の山開きで活気あふれる江戸浅草の富士浅間神社が舞台。賑やかに踊る町人たちが「何か面白いことはないか」と話していると、三味線をかかえた人気者の小間物屋・紅翫がやって来て、多彩な芸を繰り広げます。

勘九郎さんは紅翫について、「実際にいた方で、商人なのですが多趣味な方。お面を付けて、お三味線を弾きながら太鼓を叩いて町を練り歩いていたという。ちょっと今では『あ、見ちゃダメだよ』っていうような人なんですけれども(笑)」と説明。舞台には「いろいろと物売りが登場」するといい、「この物売りも今ではもちろん見かけないです。『虫売り』がいたり『蝶々売り』がいたり、『朝顔売り』とかね。『虫売りと蝶々売りは別なの?』と思ったり。いろいろな物を売っている人たちが出てくるのも、面白さの1つなんじゃないかな」と演目の見どころを語りました。

また『墨塗女(すみぬりおんな)』は、能狂言の『墨塗』を題材とした滑稽話。国許に帰ることになり別れを告げに自分のもとを訪れてくれた大名・万之丞(勘九郎)を迎えた愛妾の花野(七之助)は、帰ろうとする大名を泣いて引き留めます。しかし花野は実はしたたかで薄情な女で、なかなか涙が出てこないので茶碗に入れた水を頬につけてごまかそうとするのです。それを見ていた太郎冠者(中村鶴松)が、こっそりと水と墨を入れ替えてしまうという物語。

勘九郎さんは同作について、「能狂言の『墨塗』から持って来たものですが、シンプルで短くて面白いという、構成がすごく良く出来ています」と語り、「特に今回は『花野』という女性がしたたかっていうね。女形の中でも“キレイな人で腹黒いキャラクター”ってなかなかないと思うので、腹黒い七之助さんはぴったりかな」と報道陣の笑いを誘いました。

したたかな女・花野を演じる七之助さんは「やりがいはありますよね」と語り、「この『墨塗女』は、実は花野が万之丞のことを『好き』か『嫌いか』をあまり深く掘り下げていなくて、漠然としていてただ単に面白い。深いところを考えないでやったほうがいいのかな。脚本にも何も書かれていないので、『この人(万之丞)のことを本当に好きなのか』『好きじゃないのか』も描かれていません。『帰ってほしいのか』『帰ってほしくないのか』も分からない状況のまま進んでいくんですよ。掴みどころがない。ただ、『涙は嘘だ』ということを見せている演目」と演じる上での難しさを明かしました。

花野の本当の心情についてはお手本や正解がない中で、七之助さんは「その辺りをしっかり、自分たちの中でも固めてやってかないと。しっかり3人で話し合いたいなと思います」と意気込み。「最初見た時は『難しいな』って思いました。でも人間性が全然深く描かれていないところが面白いところだと思います」と作品の魅力を語りました。

地方公演での楽しみを聞かれた勘九郎さんは、「私たちにその質問を聞かれると、もうサウナしか出てこない! この巡業で最近の楽しみは、各地各地のサウナ施設に寄ることです」とうれしそうに回答。「北九州は平成中村座でもお邪魔している土地ですし、お友達もたくさんいるところなので、違う形でこうやって芝居を持っていけるのも楽しみのひとつです」と喜びました。七之助さんも「サウナは楽しみにしております」と兄に賛同し、「各地各地の美味しいご飯や、昼の部と夜に部の間でいろいろなところに散歩に出かけたりするのも楽しみです」と笑顔を見せました。

この記事を書いた人
コティマム

パラコネニュース編集長。元テレビ朝日芸能記者。現在も『ENCOUNT』や小学館『DIME WELLBEING』『Yahoo!ニュースエキスパート』など有名媒体で歌舞伎や舞台、芸能イベント、企業・経営者を取材中。芸能人や著名人などインタビュー経験多数。執筆記事1.2万本以上。取材は5300回以上。パラコネニュースでは“バズり”を知っているインフルエンサーやライターが、“次にバズる”最新情報をお届けします♪

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