
三井デザインテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:村元祐介)は3日、家具の設計から使用後の再資源化までを一貫して支援する新サービス『CIRCULAR FURNITURE(サーキュラーファニチャー)』を、2026年4月から提供開始すると発表しました。
設計・製造から、CFP(カーボンフットプリント)算出、DPP(デジタルプロダクトパスポート)の実装、そしてトレーサビリティ(追跡可能性)の確保までを包括的に提供するサービスは業界初の試みとなります。
背景:迫る「2028年建築物LCA制度」と「地球沸騰化」

この日は東京・港区の綱町三井倶楽部で記者発表会が行われました。発表会に登壇した村元祐介社長は、本サービスの開発背景について「サステナビリティの追求と脱炭素社会の実現は喫緊の課題。三井不動産グループの環境宣言『&EARTH for Nature』における『自然資源を循環させる』を体現する具体的な事業モデルだ」と強調しました。

背景には、気候変動による「地球沸騰化」への危機感に加え、国土交通省が2028年度からの導入を検討している「建築物LCA(ライフサイクルアセスメント)制度」があります。これは新築建築物に対し、建設から廃棄までのCO2排出量などの環境負荷を定量的に評価することを義務付けるもので、家具・インテリア業界も早急な対応が求められています。
サービスの特徴:直線型(リニア)から循環型(サーキュラー)へ
従来の家具のライフサイクルは、原材料の調達から製造、使用、そして廃棄へと続く「一方通行(リニア)」でした。同社のクリエイティブデザイン推進室長である堀内健人氏は、「これを『環状(サーキュラー)』のプロセスに変えるのが今回の趣旨」と説明します。

堀内氏は『環状(サーキュラー)』プロセスについて、「使用が終わった後に、廃棄ではなく回収して何らかの材料に戻るというところを捉えていきたい」と語り、「材料、製造、使用、回収までの循環が考えられた資源循環型特注サービスが『サーキュラーファニチャー』となります」と説明。
『サーキュラーファーニチャー』を取り組む理由について、「資源枯渇のリスク、それから今は地球温暖化ではなくて『地球沸騰化』と言われます。猛暑日などに外で子どもたちがスポーツ、遊びができないことが、日常としてあると状況になってます。家具一個一個の影響は非常に微小かもしれませんが、『子どもたちの未来のために何か貢献できることから始めましょう』というのが、今回の取り組みの趣旨の一つです」と語りました。
また「我々のクライアントさまの課題もあります。SDGsやESGの観点から『何かしなくちゃいけない』というのは共通してよく言われることです。一方でコストが非常にかかってしまったり、『やるのはいいんだけど、うまく伝えられるかな』という課題があります。この『やりたいけどやれない』というのは、社会の共通する課題になります」とクライアントの課題にも目を向け、「その一部をこのサーキュラーファニチャーで解決したい」と意気込んだ。
『サーキュラーファーニチャー』のポイント
『サーキュラーファーニチャー』は、以下の4つのポイントをワンストップで提供します。

- 低炭素・循環促進型の設計
独自ノウハウに基づき、分解やリサイクルがしやすい設計を採用。従来品と比較してCFP削減率30%以上、埋め立て処理ゼロを目指します。 - 環境負荷の見える化(CFP算出)
ISOに準拠した方法で製品のCFP(Carbon Footprint of Products:温室効果ガスの総量をCO2換算したもの)を算出。従来設計の家具と比較し、どの程度CO2を削減できたかを可視化します。 - 資源価値の見える化(DPP実装)
家具にQRコードを付与し、製品情報(素材、CFP、メンテナンス方法、リサイクル方法など)をデジタル管理する「DPP(Digital Product Passport:製品のデータ管理)」を実装します。欧州では将来的に義務化される流れを先取りした機能です。 - 資源循環が追える(トレーサビリティ)
使用後、家具に付いたQRコードから簡単に回収依頼が可能。回収後の家具がリユースされたのか、素材としてリサイクルされたのかといったステータスを追跡し、レポート化します。
QRコードで見える化
特に環境負荷の見える化や、資源価値の見える化は、QRコードを読み取ることで視覚的に理解できます。


例えば、『サーキュラーファニチャー』の試作品を循環に回す場合、使用した家具を回収に出すと、その家具を回収するために配送でかかったCO2のレポートをQRコードから知ることができます。重量、輸送距離、車種などを入力するとCO2が換算がされ、レポートとして届きます。
また堀内氏によると、「ソファなどの家具は、資源循環させるために分解して解体してそれぞれの素材に分け、それがどういう形で循環したかというところをまとめる。木材はサーマルでリサイクルされ、金属関係はそのまま金属にリサイクルされ、鉄部分は建築の鋼材になる」といいます。

家具の再資源率やリサイクルタイプなども読み込むことができ、「その資源が最終的に何になったか」という結果まで、「リサイクルフロー」というレポートとして発行されます。その過程で「どのぐらいのCO2排出があったかというところも把握することができるのです。
業界の垣根を超えたパートナーシップ
また本サービスは三井デザインテック単独ではなく、各分野の専門企業との連携により実現しました。

- CFP算出・DPP: 株式会社ゼロック、株式会社digglue
- 資源循環プラットフォーム: StateEco
- 再資源化: 株式会社ナカダイ
これまで分断されていた各工程の知見を統合することで、相互の業界における課題を解決し、実効性のある循環スキームを構築しています。
今後の展望:家具から空間全体へ
堀内氏は今後の展望として、「まずはホテルやオフィス向けの『特注家具』からサービスを開始します」と説明。ロードマップによると、2027年度には内装空間全体を対象とした『CIRCULAR INTERIOR』への展開を目指しています。

発表会の質疑応答で、コスト面への懸念について問われた堀内氏は、「必ずしもコストが2倍になるわけではなく、設計工夫により1.2倍程度に抑えることも可能。クライアントと相談しながら最適な落とし所を見つけていく」と回答。また、まずは自社がコントロールしやすい特注家具からスタートし、将来的には既製家具や一般家庭向けへの波及も視野に入れていることを示唆しました。
「やりたいけれど、コストや手間がかかってできない」という企業の悩みを解決し、透明性と信頼性の高い資源循環を実現する本サービス。2026年4月の本格始動に向け、日本の家具業界におけるサーキュラーエコノミー実装の試金石となりそうです。


